《落ちていく男》歌词

[00:00:09] この街の窓は

[00:00:12] どれも高いビルの壁にさえぎられている

[00:00:22] 青白い光だけが彼の目に届いているんだ

[00:00:41] 雑誌やテレビで見た風景や

[00:00:50] 小説の中で思い浮かべてみた風景や

[00:00:57] まるで思い出をさぐるみたいに

[00:01:02] 思い浮かべていた

[00:01:06] 階段を上がっていくとねぇ

[00:01:11] 足音だけが妙に大きく響いていて

[00:01:17] 何度も｢**｣って呟いてるみたいに

[00:01:21] 聞こえるんだ

[00:01:31] 飛び降り自殺の現場を

[00:01:33] 目撃した友達の話を思い出しちまって

[00:01:40] それでそこから見える風景は

[00:01:44] 妙にさびれていて

[00:01:48] 馬の調教場が見えて

[00:01:51] たくさんの黒い棒がうごめいている

[00:01:57] そう飛び降りて落ちていく人間も

[00:02:03] 黒い棒に手がはえた

[00:02:06] そんなふうだ

[00:02:08] っていってたな

[00:02:12] その向こうにビルの無数に

[00:02:15] 並ぶ街が見えるんだ

[00:02:21] 俺はいつのまにかそこにいて

[00:02:25] でもね誰も俺を

[00:02:29] わかってくれようとはしないんだよ

[00:02:33] しょうがなくて俺は

[00:02:35] その街を出ようとしたけれど

[00:02:39] どこへ行けばいいのかわからなくてね

[00:02:48] 通りがかりの奴と喧嘩になっちまうんだ

[00:02:57] 彼はやみくもに殴りつけるところを

[00:03:01] 何度も想像した

[00:03:08] 彼は鼻息を荒くして

[00:03:15] そして相手を殺してしまうと我にかえって

[00:03:23] 自分の考えの馬鹿さかげんに笑った

[00:03:33] 唄ってみた

[00:03:37] 自分の声がはね返って

[00:03:42] 聞こえるかと思ったけれど

[00:03:54] 下で馬鹿騒ぎしている

[00:03:55] 連中にかき消されて

[00:04:03] かえって淋しくなった

[00:04:11] 見知らぬ街に辿り着くとねぇ

[00:04:16] 目に入るすべてのものが

[00:04:23] この街にとって

[00:04:25] どんな意味をもっているのか

[00:04:28] わからなくてね

[00:04:32] 俺が最初に気に入った店も

[00:04:37] ほんとうはこの街じゃ

[00:04:43] そんなにはやっちゃいなかったんだ

[00:04:47] 空が少しだけ違うみたいに見えるし

[00:04:57] 彼はそんな思いを込めて

[00:05:04] もう一度唄ってみた

[00:05:09] この街も変にイカれてやがる

[00:05:21] いつまでたっても

[00:05:25] 街のけばけばしい

[00:05:26] 明かりは消えようとしやしない

[00:05:36] 吐き捨てた唾液すら俺を見放しやがる

[00:05:46] なんだかほんの少し気をゆるめると

[00:05:54] 俺のほうがだめになっちまいそうなんだ

[00:06:02] どうしようもない現実を

[00:06:06] かみしめるしかなかった

[00:06:12] 部屋がどんどん散らかっていくと

[00:06:18] 食がだんだん細くなっていた

[00:06:28] 彼は昔の友だちに電話してみた

[00:06:36] 相変わらずだったけど

[00:06:40] 女の話しかなかった

[00:06:45] そしてすげなく切られた

[00:06:55] 自分を裏切った女の名前を口にすると

[00:07:02] 前の部屋の隅から隅まで

[00:07:08] 思い浮かんできた

[00:07:17] 何でこんなところに自分がいるのか

[00:07:22] 情けなくなってきたよ

[00:07:29] 何を信じればいい

[00:07:35] これはいったい誰のことなの